赤ちゃんのあたまのゆがみについて
赤ちゃんの頭の形にゆがみ(頭蓋変形症)が生じる原因はさまざまありますが、まずは以下の点について判断する必要があります。
- 病的なゆがみか
『頭蓋骨縫合早期癒合症』 - 専門医療機関での加療が必要
- 病的でないゆがみか
『位置的頭蓋変形症』 - ヘルメット治療の対象
『病的なゆがみ』と『病的でないゆがみ』
病的でない頭蓋変形症(位置的頭蓋変形症)
多くは寝ぐせによって生じる外力による頭蓋変形であり、位置的頭蓋変形症といいます。 寝ぐせなどの向き癖によって頭の同じ部位が長時間圧迫され続けることで、その部分が平らになりゆがみが生じます。多くは後頭部の変形で、後頭部の片側が平らになる「斜頭症」や、後頭部の全体が平らになる「短頭症」があります。
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斜頭
- 向きぐせや斜頸のある赤ちゃんによく見られます。
- 頭頂からみると、平行四辺形に見えることがあります。
- 耳の左右差があることがあります。
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短頭
- 仰向け寝の時間が長い赤ちゃんによく見られます。
- よく絶壁と表現されます。
- 頭の前後の長さが通常より短いのが特徴です。
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長頭
- NICUで数ヶ月過ごした赤ちゃんに見られるといわれています。
- 保育器内で横向きの姿勢をとることが多いからといわれています。
位置的頭蓋変形における頭の形のゆがみパターン
頭のゆがみには「斜頭症」「短頭症」「長頭症」という3つのパターンがあり、これらの原因の多くは、寝ぐせや子宮内や産道を通るときの圧迫など、病気ではない外力による変形です。多くのケースである寝ぐせによるゆがみでは、頭を常に同じ位置に向けて寝るために接地している部分の成長が抑えられてしまい、成長に偏りが出ることで頭のゆがみが発生します。
病的な頭蓋変形症(頭蓋骨縫合早期癒合症)
一般的に赤ちゃんの脳は生後6か月までに出生時の2倍、2歳までに大人の90%の大きさになるといわれています。こうした急速な脳の成長に対応できるように、赤ちゃんの頭蓋骨は出生時には7つの骨のピースに分かれており、成長とともに次第にそれぞれのピースが接する部分がつながっていき、最終的に1つの頭蓋骨が完成します。(1歳ごろまで開いている大泉門もこうした骨と骨の隙間です)
この骨と骨の繋ぎ目の部分を「縫合線」と呼びます。縫合線が通常くっつくべき時期よりも早期に癒合してしまうと、その癒合した部分では頭蓋骨が大きくなることができず、一方で他のまだ癒合が起こっていない部分では頭蓋骨が大きくなるために頭が歪んだ形になります。こうして生じる頭のゆがみを「頭蓋骨縫合早期癒合症 craniosynostosis」といい、出生した児の0.04~0.1%で起こるといわれています。頭の骨が早期に癒合(くっつく)ことで骨の成長が阻害されて頭のゆがみが発生します。頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、赤ちゃんの頭が歪むだけでなく、頭蓋が拡大しないことで脳の成長発達に影響が出る場合や顔面骨が変形することもあります。
頭蓋骨縫合早期癒合症の程度によっては経過観察が可能な場合も多く、頭蓋骨の状態や発達に明らかな異常がない場合には定期的に検査を行いながら経過観察できるケースもあります。しかし、頭蓋骨の形態異常が明らかである場合や、頭蓋骨の変形によって脳に高い圧力がかかり脳に影響が出ると判断される場合は、手術を検討することになります。手術は頭蓋骨を切離し頭蓋容積の拡大を行う開頭手術や骨延長器という装置を留置する手術があります。手術の目的は頭蓋内圧の正常化、頭蓋拡大、頭や顔面の変形の矯正、その他合併する症状の改善などになります。
頭の形のゆがみに対する治療
頭の形を改善するための治療方法には下記などがあります。
- 『体位変換』や『タミータイム』などの理学療法
- 『ヘルメット治療』
軽度のゆがみであれば理学療法による自然治癒に期待することもできますが、重度のゆがみでは理学療法による自然治癒が難しいという研究結果があります。
体位変換
向き癖をバランス良く改善することにより、頭にかかる圧力をなるべく左右均等にすることために行います。
以下の向きが同じ方向になっている場合には左右バランスよくなるように変えてみましょう。
- 寝る際の頭と足の方向
- 抱っこする腕、授乳の際の方向
- 話しかける方向
※うつ伏せ寝は呼吸ができなくなる危険があるため、寝かせるときは必ず仰向け寝にします。
タミータイム(うつぶせ遊び)
赤ちゃんが起きている間に、赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす方法です。(タミーとは英語で「おなか」という意味です)「うつぶせ遊び」「うつぶせ練習」「腹ばい練習」などと呼ばれます。乳幼児突然死症候群を防ぐため、米国小児学会が赤ちゃんを仰向けに寝かせることを推奨しました。
しかしそのことによって頭の形がゆがんでしまう赤ちゃんが増加しました。そうした経緯から、赤ちゃんの頭の形がゆがまないようにするためにタミータイムが広く行われるようになりました。
タミータイムの効果
- 筋肉の発達
- 発達の促進
- 頭蓋変形の予防
- 呼吸器の発達
頭・首・上半身の筋肉の発達を促進し、頭の同じ部分へ繰り返し圧力がかかることを防ぎます。お母さんの胸やお腹、膝の上に赤ちゃんをうつ伏せにすることから始め、慣れてきたらおもちゃや絵本などで興味を引き、うつ伏せ運動を行います。
※窒息を回避するため地面の柔らかい場所では行わず、固いマットや床の上で必ず保護者がみている環境下で行うようにします。またそのまま寝てしまわないように気をつけましょう。
ヘルメット治療
赤ちゃんに頭の形を矯正するヘルメットを装着し、頭の成長を調整する治療方法です。1998年に米国で初めて医療機器として承認され、日本では2018年に承認されました。治療期間は主にヘルメット治療開始した時点の赤ちゃんの月齢によって異なり、早く開始するほど短い期間で終了でき、またゆがみの改善度が高くなります。
ヘルメット治療の原理
ヘルメット治療はどういった原理によるものなのでしょうか。
赤ちゃんごとに理想に近い頭の形に作成したヘルメットを装着すると、当然その時点でゆがみのある頭にはフィットしません。もっと膨らんでほしい部分と、あまり伸びないでほしい部分とができます。もっと膨らんでほしい部分にはヘルメットとの間に隙間ができ、あまり伸びないでほしい部分はヘルメットに当たることになります。
こうして、もっと膨らんでほしい部分の成長を促し、あまり伸びてほしくない部分の成長を待機させます。こうすることによる脳や知能の発達に障害が出ることはありません。
赤ちゃんの頭蓋骨の成長を部分的に制御し、平らな部分の成長を他の部分の成長に追いつかせることであたまの形を理想に近づくように整えるのが、ヘルメット治療の原理です。そのためヘルメットは赤ちゃん一人ひとりの頭の形に合わせてオーダーメイドで作成いたします。
ヘルメット治療ビフォーアフターイメージ
ヘルメットの構造
※構造はヘルメットの種類により異なります。
- シェル
- 赤ちゃん一人ひとりの頭の形に合わせて設計。ゆがみのない頭のかたちに誘導する役割を担っています。
ヘルメットシェルには、軽量化と通気性を高めるために全体に小さな通気孔が配置されており、水や中性洗剤で丸洗いが可能です。
- クッション
- シェルと赤ちゃんのあたまとの緩衝材としての役割があります。 クッションがあることで、過度に圧力がかかることを防いだり、擦れによる肌トラブルを軽減します。シェルから簡単に取り外すことができ、ネットにいれて洗濯機で丸洗いできるので、清潔な状態を維持することができます。
- ストラップ
- ヘルメットをつけ外しする際に使用します。ヘルメットを適切な位置で固定し、ずれることを防ぎます。
ヘルメット治療の流れ
ヘルメット治療の実際の流れとしては、以下のフローチャートのようになります。
※スマートフォン表示時は左右にスクロールしてご覧ください。
まず初診時に検査を行い、病的な頭蓋変形症かそうでないかを診断いたします。病的頭蓋変形症である頭蓋縫合早期癒合症である可能性のある場合には、専門の医療機関へ紹介いたします。
病的ではない位置的頭蓋変形症と診断されれば、次に特殊なカメラで赤ちゃんの頭部を撮影してコンピュータ分析を行い、頭蓋変形の重症度を判定します。ゆがみが軽度であれば、ヘルメット治療を行わずにそのまま経過観察とし、自然な成長による改善に期待することもできます。ゆがみが高度でヘルメット治療を希望される場合、メーカーにデータを送信してヘルメット作成を依頼します。ヘルメットは赤ちゃんごとに個別に作成するため、作成依頼から完成まで2週間ほどお待ちいただくことになります。ヘルメットが完成しクリニックに届いたら、赤ちゃんに来院いただき実際に装着具合を確認、問題なければヘルメット治療の開始となります。
ヘルメット治療中は日常生活のなかでなるべく長い時間装着していただき、治療管理アプリで装着時間等を記録しながらお過ごしください。
約1ヵ月ごとに来院いただき、経過を確認いたします。こうして数ヵ月経過し、頭蓋変形が改善されればヘルメット治療は終了となります。
ヘルメット治療のご留意点
- 納期は約2週間必要となります
- 当院での診断後、ヘルメット発注から装着るするまで2週間程度必要となります。
- 赤ちゃんの頭の成長が治療の効果を高めるため、早い月齢で治療を始めるほど、治療期間が短く、効果も出やすくなります。頭の形が気になる場合は、なるべく早めに専門の医療機関にご相談いただくことをおすすめします。
- 装着は1日23時間必要です
- 1日23時間、入浴や汗を拭きとるなどの時間以外は継続して装着することを推奨しています。
- 装着時間が長いほど、平担部の成長が促進されるため、治療効果は高くなります。但し赤ちゃんが発熱している等の体調不良時やブールに入る、写真を撮る、お肌の赤みで休憩などの場合、短時間を外すことは問題ありません。
- ヘルメットは清潔に保ってください
- ヘルメットシェル、クッションを定期的に洗浄してください。長く手入れをしない場合、臭いや皮膚の炎症、不快感などの問題が発生する場合があります。
- 通院は月に1回必要となります
- 赤ちゃんの月齢や歪みの度合いより頻度は異なりますが、ヘルメット治療中の通院は月に1回程度が目安となります。当院で治療経過やトラブルが発生していないかを確認します。
- 治療期間は2~6ヶ月程度です
- 歪みの度合いや開始時期によって異なりますが、標準的な治療期間は2~6ヶ月です。
低月齢で頭のゆがみ度合いが低いほど治療期間は短くなります。
- 歪みの度合いや開始時期によって異なりますが、標準的な治療期間は2~6ヶ月です。
ヘルメットは13種類のカラーバリエーションから選ぶことができます
ヘルメット治療の費用
- 初診時の診察<保険診療>
- 問診・診察・検査による病的頭蓋変形症かどうかの診断
- 超音波(エコー)検査
- レントゲン検査
- 検査は必要に応じ、頭蓋骨の病気がないかどうかの診断のために行います
以下につきましては自費診療となります
- 3Dカメラ撮影・重症度判定費用:無料
- 3Dカメラ撮影
- データ解析によるゆがみの重症度判定
- 3Dカメラ撮影後のデータ解析には30分ほどお時間を要します。小さなお子様がいらっしゃいますので、マイカー内でお待ちいただきますことを推奨いたします。お待ちいただくことが困難な場合には、後日のご来院をお願いいたします。
- ヘルメット治療費用:295,000円(税込)
- 実際にヘルメット治療を希望される場合にかかる費用です。
- お支払い方法は現金またはクレジットカード(一括)となります。
- ヘルメット治療費用には以下の内容が含まれます。
- ヘルメット製作
- ヘルメット装着と治療開始にあたっての確認
- 記録用アプリのご案内
- 再診時の診察費用:無料
- 治療開始から終了までの定期診察(約1カ月ごと)
- ヘルメット装着による皮膚異常などの確認・診察
皮膚の荒れが確認された場合には、程度に応じ軟膏をお渡しいたします。
- ご留意点
- ヘルメットは赤ちゃん一人ひとりに対してすべてオーダーメイドで作成いたしますので、お申し込み後の返金はいかなる理由であっても致しかねます。ご了承くださいませ。
赤ちゃんのあたまのかたち外来 診療時間
- 月・火・木・金 14:00~16:30
- 完全事前予約制です。前日までにWEBまたはお電話でご予約くださいませ。
- 来院いただくと必ずヘルメット治療をお勧めするわけではございません。お気軽にご相談くださいませ。