群発頭痛の疫学
群発頭痛の有病率は10万人あたり56~401人程度と報告されており、群発頭痛と比べると患者数は少ないです。およそ1,000人に1人程度と考えると、頭痛外来では群発頭痛の方を100人診察したら1人群発頭痛の方がおられるぐらいの頻度です。
発症年齢は20~40歳台が多く、男性の有病率が女性の3~7倍です。夜間・睡眠中に頭痛発作が起こりやすく、また春~秋に多いともいわれています。
誘発因子・増悪因子としてはアルコール飲料、ニトログリセリン、ヒスタミンが挙げられています。また群発頭痛患者の中には大酒家・ヘビースモーカーが多いことが指摘されています。
群発頭痛の病態
群発頭痛患者ではサーカディアンリズム(概日周期)に関係しているメラトニンなどに変化がみられることから、サーカディアンリズムの中枢に変化が生じている可能性が考えられています。また群発頭痛発作時には視床下部の活性化が認められています。最近の研究では視床下部全部が三叉神経系の活性化と頭部自律神経系の異常の発現に重要な働きをしていることが示されています。
群発頭痛では激しい頭痛発作を繰り返す「群発期」と、頭痛が消失する「寛解期」が存在します
群発期
極めて激しい頭痛発作を繰り返し、数週間~数ヵ月続きます。痛みは必ず片方の目の奥あたりに生じ、安静にするというよりはあまりの痛さのためにじっとしていられずに動き回ることが多いです。
寛解期
群発期と次の群発期の間の頭痛が起こらない期間のことで、通常数ヵ月~数年間続きます。10~15%の患者さんでは寛解期のない「慢性群発頭痛」の症状がみられます。
群発頭痛の診断
厳密に一側性(両側に出ることはない!)の重度の頭痛発作が、眼窩部(目の奥)・眼窩上部・側頭部のいずれか1つ以上の部位に発現し、15~180分間持続します。発作頻度は1回/2日~8回/日です。疼痛は頭痛と同側の結膜充血、涙が出る、鼻づまり、鼻水、全学部および顔面の発汗、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、まぶたが下がる・腫れるといった症状を伴い、落ち着きのなさや興奮した様子を認めます。
診断基準
- A B~Dを満たす発作が5回以上ある
- B (未治療の場合に)重度~きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に15~180分間持続する
- C 以下の1項目以上を認める
- ① 頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
- a)結膜充血または流涙(あるいはその両方)
- b)鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
- c)眼瞼浮腫
- d)全学部および顔面の発汗
- e)縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
- ② 落ち着きのない、あるいは興奮した様子
- ① 頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
- D 発作の頻度は1回/2日~8回/日である
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
群発頭痛の治療
急性期治療
群発頭痛の急性期(発作期)の治療については、スマトリプタン皮下注射と酸素吸入に関するエビデンスが最も確立されています。
スマトリプタン
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●イミグランキット皮下注3mg
酸素吸入
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●医療機関内
フェイスマスク側管から7L/分で15分間の酸素吸入を行う
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●自宅内:在宅酸素療法HOT
群発頭痛患者には有意に喫煙者(しかもヘビースモーカー)が多く、在宅酸素療法HOTの際には火災に十分注意する必要があります!
予防療法
- 群発頭痛の予防療法については有効な方法は少なく、強く推奨される治療法はありません。また群発頭痛に対する予防療法を行う場合は、通常群発期が終了したタイミングで中止します。
- Ca拮抗薬であるベラパミルの適応外使用が認められており、最大使用量は240mg/日です。
- ステロイドの短期間服用は群発頭痛発作の早期終了に有効とされているものの、エビデンスは明らかではありません。ベラパミルと併用することで、短期的な予防効果を示すことが示されています。
- 後頭部へのステロイド皮下注が予防効果を示すことが報告されています。
- ガバペンチン、トピラマート、バクロフェンなどの有効性が報告されていますが、効果については確立されていません。