片頭痛の疫学
慢性頭痛を有する人は約4,000万人と推定されており、そのうち約840万人は片頭痛患者、そしてそのうち74.2%の方が頭痛によって日常生活への支障度が高いと考えられています。

日本における片頭痛の年間有病率は8.4%(前兆のない片頭痛5.8%、前兆のある片頭痛2.6%)です。20~40歳台の女性で特に多く、最も有病率の高い30歳台女性では約20%に達し、なんと5人に1人は片頭痛ということになります。40歳台女性でも約18%と30 歳台に並ぶ非常に高い有病率となっています。未成年における片頭痛有病率では、小学生3.5%、中学生4.8~5.0%、高校生9.8%と年齢が上がるにつれて増加します。
片頭痛の病態
片頭痛がなぜ起こるのか、その病態は現在でも完全にはわかっていません。現在最も有力と考えられている機序として「三叉神経血管説」というものがあります。
三叉神経血管説
頭蓋内(主に硬膜)の血管周囲に三叉神経終末が分布しており、何らかのストレスが負荷されることによってこの三叉神経終末に興奮が起こり、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、サブスタンスPなどの神経伝達物質・血管作動性物質が分泌され、血管拡張などの神経原性炎症が起こり頭痛が生じるというものです。
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Moskowitz MA. Ann Neurol 1984 16 157-168
清水利彦、神経内科外来シリーズ 頭痛外来(総編集:荒木信夫)、メジカルビュー社、2015.p.119を一部改変
柴田護、神経内科外来シリーズ 頭痛外来(総編集:荒木信夫)、メジカルビュー社、2015. p.2-4
片頭痛の前兆
片頭痛患者の中には前兆症状を経験される方がいます。前兆とは通常5~60分持続し、片頭痛発作の起こる前60分以内に生じる完全可逆性の再発性中枢神経症状です。前兆には視覚症状・感覚症状・言語症状・運動症状・脳幹症状・網膜症状があります。典型的前兆を伴う片頭痛でみられる前兆には視覚症状・感覚症状・言語症状があり、90%以上は視覚症状です。前兆として運動麻痺(脱力)がみられた場合には「片麻痺性片頭痛」として通常とは別に考えなければなりません。
視覚性前兆
視覚性前兆として最もよくみられるのが「閃輝暗点(せんきあんてん)」です。
90%以上を占めます。
“視野の中心付近にジグザグした形が現れ、右や左方向に徐々に拡大し、閃光で縁取られ、その結果視界が欠ける”といった現象です。“光る歯車が見える・大きくなる・増える”や“視界の縁のほうから欠けてくる”という表現などもあります。

感覚症状
次に頻度が多いのは感覚障害です。チクチク感として現れ、発生した部位から片側の身体・顔面・舌へ広がることが多いですが、最初から感覚の鈍さを生じ、それが唯一の感覚症状である場合もあります。
言語症状
さらに頻度は下がりますが言語症状が現れることがあります。通常、うまく言葉が出てこなくなる症状(失語)がみられます。
運動症状(片麻痺性片頭痛の前兆)
手足の運動麻痺(脱力)が生じ、立っていられなくなることがあります。「片麻痺性片頭痛」と診断するためには、この運動症状以外に視覚症状・感覚症状・言語症状の少なくとも1つ以上を伴っている必要があります。運動症状は完全可逆性であり、永続的な麻痺を残すことはありません。また通常の前兆より持続時間が長く、5~72時間持続する場合があります。
脳幹症状
構音障害(呂律が回りにくい)、回転性めまい、耳鳴、難聴、複視(物が二重に見える)、運動失調(麻痺はないのにうまく動かせない)、意識障害といった症状がみられることがあります。
網膜症状
「網膜片頭痛」では頭痛に先行して片側の眼の視覚症状(閃輝暗点、視覚消失)が再発性に5~60分現れます。
こうした前兆が認められるのは片頭痛患者全員ではなく、むしろ前兆のあるケース(2.6%)のほうが無いケース(5.8%)より少ないです。なお、女性の片頭痛患者の方の中には、月経困難症などで産婦人科へも通院し低用量ピルを服用されているケースがしばしばみられます。前兆を認める場合にはエストロゲン含有の低用量ピルの使用は禁忌(脳梗塞の発症リスクが上昇するため)となるため注意が必要で、産婦人科医師ともよく情報共有を行う必要があります。また④片麻痺性片頭痛、⑤脳幹性前兆を伴う片頭痛 ではトリプタンの使用はできません。
前兆が生じるメカニズムとして考えられているのは、『皮質拡延性抑制』という現象です。こちらについては専門的医学的知識となりますので、こちらでは詳細は割愛します。
皮質拡延性抑制
大脳皮質ニューロンの過剰興奮に引き続いて同心円状に脱分極し、その後しばらく電気活動の抑制される状態が2~3mm/分の速度で大脳皮質を伝播するという現象です。この皮質拡延性抑制によって硬膜や脳軟膜の血管に収縮や拡張、さらには硬膜動脈の血漿蛋白の血管外漏出を引き起こすことが知られており、片頭痛前兆の原因と考えられています。
片頭痛の誘発因子・増悪因子
片頭痛が生じやすくなる原因や悪くなりやすい原因としては以下のものが挙げられます。

精神的因子
ストレス、ストレスからの解放、疲労、睡眠の過不足
内因性因子
月経周期
環境因子
天候の変化、温度差、光、音、におい
ライフスタイル因子
運動、欠食、性行為、旅行
食事性因子
空腹、脱水、アルコール、特定の食品
甲状腺機能異常と片頭痛の関連についての報告があり、片頭痛を有する割合が甲状腺機能低下症のある方(53%)のほうが、そうでない方(38%)と比較して有意に多かったと報告されています。しかし片頭痛患者における甲状腺機能異常についての報告はまだ少なく、甲状腺機能異常が片頭痛の原因となるかどうかについては今後も検討を続けていく必要があります。
片頭痛全体としては、男女とも加齢とともに改善・寛解することが多いですが、更年期には増悪する場合もあります。
片頭痛による経済的損失
片頭痛は個人の生活に支障をきたすだけではなく、社会に与える影響も多大です。
というのも、片頭痛有病率のピークは男女とも生産年齢(15~65歳)であり、学業や仕事に影響するからです。
片頭痛による損失にはアブセンティーイズム(欠勤・休業)とプレゼンティーイズム(労働遂行能力低下)の2つがあります。
つまり片頭痛がひどくて仕事を休む場合と、出勤はするものの体調が悪いために本来の仕事内容を行えない場合です。
どちらも重大な問題ですが、アブセンティーイズム以上にプレゼンティーイズムによる損失がより深刻な経済的損失を生み出していると考えられています。
日本においては、片頭痛によるプレゼンティーイズムにより年間3,600億円~2兆3,000億円の経済的損失が発生していると推計されています。
にもかかわらず、日本では片頭痛患者の約7割は医療機関を受診していないことが明らかとなっています。
頭痛のある方自身が“頭痛は仕方ないもの”と思わずに頭痛外来を受診すること、そして職場全体が組織として片頭痛に対して正しく理解し、片頭痛患者をケア・受診できるようにする環境整備が重要なのです。

片頭痛の診療
頭痛に困って医療機関を受診される方は、頭痛によって日常生活に大きな苦痛と支障を抱えている場合が多いです。
そうした方に対しては、頭痛専門外来でのより専門性の高い診療が必要です。
「おそらく片頭痛でしょう。とりあえずロキソニンやトリプタンなどの痛み止めを出しておくので、これで様子をみましょう。」という診療は最も悪い診療の一例です。こうした診療を受けたことのある方、頭痛はよくなりましたでしょうか?
“鎮痛薬を服用してひとまずその時の頭痛は改善した”、これは頭痛治療ではありません。
頭痛治療とは、そもそも頭痛が起こる頻度や頭痛の強さを軽減させ、頭痛が起こるために低下してしまっている日常生活の質を改善することです。
そうした頭痛診療を行うのが頭痛外来です。

頭痛診療で使用するツール
頭痛問診票
当クリニックでは、頭痛の診察において質問・確認すべき特定の項目を集約した頭痛問診表を使用しています。頭痛問診表を使用することにより、的確な頭痛の診断に役立つためです。また頭痛問診票以外にも頭痛の重症度を評価するための以下のようなスコアリング(点数化)ツールがいくつか存在し、当クリニック頭痛外来で採用しています。

HIT-6(Headache Impact Test)

6つの質問で構成されており、1分以内に回答できる評価法です。最近4週間の頭痛の強度・日常生活への影響・社会生活への影響・頭痛による精神的負担などの質問に対して、各々5つの選択肢が設けられています。それぞれの選択肢に点数が付加されており、合計点数が56点以上の場合には頭痛による日常生活への支障が大きいと判断されます。
MIDAS(Migraine Disability Assessment)

※出典:一般社団法人 日本頭痛学会
過去3か月間の頭痛における日常生活への支障度を評価する、自己記入式の簡便な質問票です。日常生活を仕事・学校、家事、余暇の3つの領域に分類して質問を設定しています。頭痛全般に有用なツールであり、日本を含む各国で翻訳され、信頼性・妥当性が検証されています。各質問の合計日数をもとにスコア化し、支障度をI~IVの4段階に分類します。点数が高いほど支障度が高く、グレードIII(11スコア)以上で生活支障度は中等度以上と判断され、治療の対象となります。
MIBS-4(4-item Migraine Interictal Burden Scale)

片頭痛の発作間欠期(頭痛のない日)の支障度を評価することができるスコアリングツールです。過去4週間における4つの質問項目についてそれぞれ6段階で自己評価し、合計点数によって支障度を評価します。
発作間欠期の支障度とは?
「頭痛があるときにつらいのはわかるけど、頭痛がないときにも支障が出るの?」と思われるかもしれません。片頭痛が頻繁にある方は、実は頭痛が起こっていない日にも「次いつ突然またあのつらい頭痛がくるかわからない」と感じているのです。そしてそのために家族や友人との約束を避けるようになり関係性が悪化してしまったり、外出を控えるようになってしまったりするケースが多々あるのです。そうしたことは頭痛発作そのものによる苦痛ではなく、頭痛がないにもかかわらず被っている苦痛であるととらえることができます。こうした頭痛発作そのもの以外による支障度についても評価し、そして改善を図っていくことが頭痛治療の重要な一面でもあります。

出典:日本イーライリリー株式会社 2023年09月20日 片頭痛発作がない時(発作間欠期)に関する患者と医師への意識調査結果発表
頭痛ダイアリー
頭痛ダイアリーとはその名の通り日々の頭痛に関しての日記帳です。
頭痛ダイアリーを記録することで、①頭痛日数、②頭痛の正常、③痛みの強さ、④持続時間、⑤随伴症状(頭痛に伴って起こる他の症状)、⑥誘発因子(頭痛が起こる原因・条件)、⑦薬剤使用状況、⑧生活支障度などを具体的に確認することができます。
そのため診察する医師にとっては通常の問診のみと比べて個々の頭痛に対する正しい診断率の向上に役立つだけでなく、患者さん本人にとっても自身の頭痛が生じる傾向が把握できることがあります。頭痛が重度であればあるほど頭痛診療にとって必要不可欠ともいえるツールですので、ぜひご活用ください。

頭痛診療における画像検査
当クリニックではご案内の通りMRIを導入しており、脳や脳血管をただちに評価することができます。
これまでに頭痛についての検査を受けたことがない方、過去に頭痛で受診し画像検査を受けたことがあっても最近頭痛が増悪してきたり、これまでとは違う頭痛やその他の症状を伴ったりする方はMRI検査を行っておくべきです。これは、脳卒中や脳動脈解離などの重度疾患で生じる頭痛が片頭痛での痛みと酷似している場合があるからです。
“以前から時々頭痛があり過去にCTやMRI検査を受け“異常なし”と診断された方が、最近似たような頭痛が毎日続くようになり片頭痛の悪化だと思っていたら手足の麻痺や呂律が回りにくくなるといった症状が加わり、画像検査を受けたら脳出血だった”というようなケースを経験します。脳疾患が重症化するケースが多く早期対応がきわめて重要であるため、診察上必要と判断した場合には検査を推奨しています。

画像検査を行ったほうがよいケース
- 初回の頭痛発作の場合
- 頭痛発作が通常と異なるまたは長期に及ぶ場合や前兆が長引く場合
- 頭痛発作頻度や重症度(強さ)が増加した場合
- 今までで最悪の頭痛である場合
- 脳幹性前兆(呂律が回りにくい、回転性めまい、耳鳴、難聴、物が二重に見える、運動失調、意識障害)を伴う場合
- 錯乱を伴う場合
- 運動症状を伴う場合
- 50歳以上で初発の場合
- 前兆のみで頭痛を伴わない場合
- 頭痛側または前兆側(右か左か)が常に固定している場合
- 外傷後に生じた頭痛の場合
これらに該当する場合、以前に画像検査を受けたことがあるかどうかは関係なく、画像検査を行うことが勧められます。
片頭痛の診断
ひと言に“片頭痛”といっても、実は複数の細かな分類があります。そもそも片頭痛なのかどうかのみならず、片頭痛の中でもさらに病型によって薬剤などの治療法が異なってくるため、頭痛専門外来ではより正確な頭痛診断が必要です。
前兆のない片頭痛
頭痛発作を繰り返す疾患で、発作は4~72時間持続する。片側性、拍動性の頭痛で、中等度~重度の強さであり、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴であり、随伴症状として悪心や光過敏・音過敏(あるいはその両方)を伴う。
診断基準
- A B~Dを満たす発作が5回以上ある
- B 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
- C 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
- ① 片側性
- ② 拍動性
- ③ 中等度~重度の頭痛
- ④ 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
- D 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
- ① 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
- ② 光過敏および音過敏
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
片頭痛診断の落とし穴
片頭痛という病名をみてみると、“片”という字が入っています。このことから一般的に片頭痛ではあたまの“右か左の片側”に痛みが生じると思われていることが多く、医師の中にすら「両方のこめかみが痛いなら片頭痛じゃないね」「ギューっと締め付けられるような痛みなので緊張型頭痛(肩こり頭痛)でしょう」というような誤診を時々みかけます。もうひとつの片頭痛の特徴としてよく知られているのが、“ズキズキ”、“ガンガン”、“脈打つような”といういわゆる拍動性の痛みです。たしかに片頭痛の痛みは拍動性である場合が多く、決して間違ってはいません。しかし必ずしもそうとは限らないのです。
上記の診断基準のC項目を見ながら次の例を考えてみましょう。
左右関係なく頭全体が締め付けられるように痛む。頭痛は非常に重度で出かけることができず、学校や仕事を休んでしまうことがある。
どうでしょうか。頭痛診療でよく見かけるパターンですが、片側性でも拍動性でもなく①、②に該当しません。しかし重度の痛みで日常動作を避けてしまっているので③、④の2項目を満たし、片頭痛の診断基準に該当します。このように一般的に知られている片頭痛の典型像にあてはまらない片頭痛が存在します。こうしたケースで誤診せず、適切な診断と治療を行うために頭痛専門外来が重要なのです。
前兆のある片頭痛
数分間持続する、片側性完全可逆性の視覚症状、感覚症状またはその他の中枢神経症状からなる再発性発作であり、これらの症状は通常徐々に進展し、また通常それに引き続いて頭痛が生じ、片頭痛症状に関連すると考えられている。
診断基準
- A BおよびCを満たす発作が2回以上ある
- B 以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある
- ① 視覚症状
- ② 感覚症状
- ③ 言語症状
- ④ 運動症状
- ⑤ 脳幹症状
- ⑥ 網膜症状
- C 以下の6つの特徴の少なくとも3項目を満たす
- ① 少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展する
- ② 2つ以上の前兆が引き続き生じる
- ③ それぞれの前兆症状は5~60分持続する
- ④ 少なくとも1つの前兆症状は片側性である
- ⑤ 少なくとも1つの前兆症状は陽性症状である
- ⑥ 前兆に伴って、あるいは前兆出現後60分以内に頭痛が出現する
- D ほかに最適なICHD-3の診断がない
前兆にはさまざまな症状が含まれます
前兆にはさまざまな症状が含まれますが、①~③の3つを典型的前兆といい、さらに前兆のうち90%は①視覚性前兆です。
- ① 視覚性前兆
視覚性前兆として最もよくみられるのが「閃輝暗点(せんきあんてん)」です。“視野の中心付近にジグザグした形が現れ、右や左方向に徐々に拡大し、閃光で縁取られ、その結果視界が欠ける”といった現象です。“光る歯車が見える・大きくなる・増える”や“視界の縁のほうから欠けてくる”という表現などもあります。
- ② 感覚症状
次に頻度が多いのは感覚障害です。チクチク感として現れ、発生した部位から片側の身体・顔面・舌へ広がることが多いですが、最初から感覚の鈍さを生じ、それが唯一の感覚症状である場合もあります。
- ③ 言語症状
さらに頻度は下がりますが言語症状が現れることがあります。通常、うまく言葉が出てこなくなる症状(失語)がみられます。
慢性片頭痛
頭痛が月に15日以上の頻度で3ヵ月を超えて起こり、少なくとも月に8日の頭痛は片頭痛の特徴をもつ。
診断基準
- A 片頭痛様または緊張型頭痛様の頭痛が月に15日以上の頻度で3カ月を超えて起こり、BとCを満たす
- B 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たすか、1.2「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が、併せて5回以上あった患者に起こる
- C 3か月を超えて月に8日以上で、下記のいずれかを満たす
- ① 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たす
- ② 「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす
- ③ 発作時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンあるいは麦角誘導体で改善する
- D ほかに最適なICHD-3の診断がない
慢性片頭痛の有病率は1.4~2.2%とされています。頭痛発作の日数が多く、片頭痛の重症型といえます。対して頭痛発作の日数が月に4~14日である状態が3か月にわたってみられるものを「反復性片頭痛」と呼びますが、反復性片頭痛の方の年間約3%が「慢性片頭痛」へと悪化します。片頭痛が慢性化すると非常に厄介で、必然的に鎮痛薬の使用頻度も増えるため、後述する「薬剤の使用過多による頭痛」を合併する、あるいは初診時にすでに合併しているケースが多いです。さらにはそうしたつらい日々のせいで不安や抑うつを合併していることもあります。当然、治療が難航する頻度も上昇します。そのため片頭痛の治療は的確かつ早期になされるべきなのです。
慢性片頭痛では、すでにどの急性期治療薬(鎮痛薬)もほとんど効かなくなってしまっていることが多いです。慢性片頭痛のゴールは、片頭痛の完全寛解や治癒(頭痛ゼロ)ではなく、発作頻度・重症度・慢性片頭痛の期間を減らすことであり、日常生活機能・動作を改善させることにあります。一方で慢性片頭痛の急性期治療(痛み止めの使用)については、「薬剤の使用過多による頭痛」への移行を阻止するため、使用日数を制限(週に2日以下)することが望ましいとされます。それを達成するために大切なことは、有効な痛み止めを探すことではなく、しっかりとした予防療法を行うことです。
片頭痛の治療<予防療法>
片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方では、予防療法が推奨されます。また日数だけでなく、急性期治療(鎮痛薬)のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合、急性期治療薬が使用できない場合、永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛の場合にも予防療法を行うことが推奨されます。
片頭痛予防療法のゴールは、①片頭痛の発作頻度の減少・重症度の軽減と持続時間の短縮、②急性期治療への反応性の改善、③生活機能の向上と生活への支障の軽減 です。これらの達成を目指し、それぞれの患者様の頭痛の特徴や基礎疾患などのバックグラウンドを考慮しながら、最適と思われる治療薬を選択します。予防療法はいわば“頭痛発作の起こりにくい体づくり”であり、即効性のあるものではありません。効果が実感できるタイミングは人によりばらつきがありますが、多くの方では翌日~2,3週間以内に頭痛の改善を感じる方が多いように思います。最初に始めてみたお薬で頭痛の改善が得られない場合には、他のお薬に変更してみる・量を増やしてみるといったことを試します。
片頭痛の治療<片頭痛予防薬>
予防療法として処方する薬剤には経口投与薬(飲み薬)と、CGRP関連薬剤という皮下注製剤(オートインジェクター)があります。
これらは一般的によく使用される薬剤であり、すべて全国の医療機関で処方されており、大きな専門病院とクリニックとで違いはありません。
※皮下注製剤(オートインジェクター)については処方できる医師が限定されて、どの医療機関でも処方できるというわけではありません。当クリニックではもちろん処方可能です。
経口薬
CGRP関連薬剤
<経口薬>プロプラノロール
●インデラル錠10mg β遮断薬
β遮断薬は主に高血圧、冠動脈疾患、頻拍性不整脈の治療薬として使用されますが、片頭痛予防薬として古くから使用され2010年3月に片頭痛予防薬として保険適用が認められました。その作用機序・薬理学的根拠はいまだに明確にされていない部分も多いですが、末梢血管や自律神経へのβ遮断作用だけでなく、動物実験では前兆の原因である皮質拡延性抑制CSDを抑制することが知られています。
投与量は20~30mg/日から開始し、効果不十分の場合には60mg/日まで徐々に増量することができます。
忍容性が高く重篤な副作用が少ないため片頭痛予防薬として積極的に使用が推奨され、特にβ遮断薬という特性から高血圧や冠動脈疾患の既往のある方では第一選択薬として使用が勧められます。
喘息の方では使用できません。
急性期治療薬であるリザトリプタン(マクサルト)との併用ができません。
妊娠中にも比較的安全に使用できることが大きな特徴であり、頭痛が重度のため妊娠中でも予防療法が必要な場合に選択肢として検討することができます。

<経口薬>バルプロ酸
400~600mg/日の服用が勧められます。
片頭痛治療における至適血中濃度は21~50μg/mLであり、バルプロ酸の使用中は定期的に血液検査を行い血中濃度を測定します。
バルプロ酸は予防薬のなかでは片頭痛の改善効果が比較的高いと考えられていますが、胎児の催奇形性のリスクがあるため、妊娠可能年齢の女性に対しては第一選択とはなりません。妊娠中のバルプロ酸の使用は禁忌です。
小児の片頭痛に対するバルプロ酸の投与は、生活支障度が高く他の薬剤が無効の場合、脳波上にてんかん波がある片頭痛(あるいはてんかん関連頭痛)に限定し、かつ慎重に治療を行うことが勧められます。
バルプロ酸以外の抗てんかん薬については、片頭痛予防薬としては日本では適応がありません。
-
●セレニカR錠
脳内のアセチルコリンという神経伝達物質の量を増やすことによって認知機能の改善を試みます。
-
●セレニカR顆粒
記憶障害や、時間や場所の認識の問題である見当識障害などの症状進行を遅らせます。
-
●デパケンR錠 抗てんかん薬
貼り薬です。服薬困難な人に対して有用なタイプです。
<経口薬>アミトリプチリン
●トリプタノール錠10 三環系抗うつ薬
片頭痛の病態にはセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の関与が示唆されており、抗うつ薬は中枢神経系でこれらの物質の濃度を高めることで、抗うつ作用だけでなく鎮痛作用を発揮すると考えられています。また片頭痛予防薬としてのアミトリプチリンの使用は、抑うつ状態の共存の有無に関わらず有効です。
アミトリプチリンによく認められる副作用として、抗コリン作用による口渇・便秘・排尿障害・眼圧上昇・心拍数増加、抗ヒスタミン作用による眠気・ふらつきが挙げられます。こうした副作用を回避するため5mg/日(0.5錠)などなるべく少量から投与を開始し、副作用の有無を確認しながら徐々に効果が得られる投与量まで増量することが勧められます。(あくまで個人的な使用経験ですが、実際にトリプタノール錠10を1日0.5錠から投与開始しても眠気を訴える方は比較的おられる印象です。その場合には夕食後や就寝前の投与とすることなどを試みることがあります。)
妊娠中の女性に対しては、大量に投与した場合に胎児の催奇形性が報告されていることから、使用すること自体は禁忌ではありませんが、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみに限定したほうが安全です。

<経口薬>ロメリジン
●ミグシス錠5mg Ca拮抗薬
ロメリジンは日本で開発・使用されており、他の片頭痛予防薬と比べてエビデンスの質こそ高くないものの、重篤な副作用の心配がほとんどなく、片頭痛予防療法として第一選択として使用されることの多い薬剤です。Ca拮抗薬は前兆の原因である皮質拡延性抑制CSDを抑制するため、特に前兆のある片頭痛に有効性が期待できます。またロメリジンは全身の末梢血管に対する作用が少ないため、過度な血圧低下によるめまいなどの心配は少ないと考えられています。
まず処方する機会の多い予防薬ですが、妊娠中の方では使用禁忌であるため、妊娠を計画(妊活中)していて近々妊娠するかもしれない方では使用を控えなければなりませんので、お気軽にご相談ください。

CGRP関連薬剤について
2021年に保険収載され日本でも使用可能となった片頭痛予防薬です。その有効性と安全性の高さからアメリカやヨーロッパでは第一選択薬(片頭痛と診断されたら最初に使用すべき薬剤)となっており、日本でも高い推奨度となっています。それまで片頭痛の予防治療薬として上記の経口薬しかなく、なかなか治療がうまくいかないケースも多かった中で、ようやく登場となり、瞬く間にその高い有効性が確認され“片頭痛治療における革命”ともいわれている薬剤です。急性期治療薬に頼ることなく予防療法の段階で片頭痛をコントロールすべきという考えが常識となっており、間違いなく予防療法の中心となってきています。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide: CGRP)とは、片頭痛発作を起こす直接原因となっている神経伝達物質です。
この片頭痛を起こすCGRPの作用をブロックすることで高い片頭痛抑制効果を発揮します。現在、各製薬会社から3種類の製品が発売されています。
CGRP関連薬剤の作用機序
- すべてのCGRP関連薬剤は同じ経路に作用するが、抗体の種類や標的は異なる。
- ガルカネズマブは1gG4抗体で、CGRPに高い親和性と選択性を有する。

ガルカネズマブ(エムガルティ)
エムガルティは、片頭痛の治療に使用される薬物で、主成分としてガルカネズマブを含みます。
ガルカネズマブは、抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)療法の一環として開発され、CGRPは、片頭痛の発作と関連していると考えられる神経伝達物質です。
ガルカネズマブはCGRPと結合し、片頭痛の発作を調節する神経伝達を抑制することで、痛みや症状の緩和を促進することができます。
皮下注射として投与し、 片頭痛の予防的な治療に用いられます。
効果は個人により異なりますが、一部の患者では片頭痛の頻度や重症度が減少することが報告されています。一般的な副作用には皮膚反応(注射部位の発赤やかゆみなど)が挙げられます。

エムガルティの投与間隔
エムガルティは初回に2本、2ヶ月目から1ヶ月に1本注射をします。

エムガルティの費用(3割負担の場合)
- 1本約12,802.5円
- 初回(2本注射)約25,605円
- 翌月以降(1ヵ月月に1本)約12,802.5円
ガルカネズマブ(エムガルティ)の作用機序

フレマネズマブ(アジョビ)
『アジョビ』もエムガルティと同じく片頭痛治療薬です。
片頭痛の発現に重要な働きをしていると考えられているCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に選択的に結合し、CGRP受容体への結合を阻害することで、片頭痛発作の発症を抑制します。

アジョビの投与間隔
●4週間に1回、1本注射

●12週間に1回、3本注射

アジョビの費用(3割負担の場合)
- 1本あたり約11,727円
フレマネズマブ(アジョビ)の作用機序
エレヌマブ(アイモビーグ)
アイモビーグは、片頭痛患者向けに特に設計された完全なヒトモノクローナル抗体であり、CGRP受容体の阻害を通じて片頭痛の予防を目指した薬です。
メーカーが発表内容では、治療開始後1ヶ月で月間の片頭痛発作の頻度が有意に減少する傾向が見受けられ、プラセボ群と比較して治療を開始して1ヶ月目から有意な差が認められ、この効果は治療を継続して6ヶ月まで持続したという結果がでています。

アイモビーグの投与間隔
4週間に1回の間隔で、1回1本投与します。投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与を行い、以降はその投与日を起点として4週間に1回の間隔で投与を行います。

アイモビーグの費用(3割負担の場合)
- 1回あたり約11,694円
エレヌマブ(アイモビーグ)の作用機序
アイモビーグは、片頭痛の病態形成に中心的役割を果たすカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の受容体を選択的に阻害する、唯一の完全ヒトモノクローナル抗体製剤です。

これらCGRP関連薬剤の有効性は非常に高く、薬剤を使用した方の90%以上で明らかな頭痛の改善を認めています。そしていずれの薬剤も重篤な副作用の心配が少ないというのが特徴です。
一方で唯一といってもよいデメリットはその高い薬価です。3割負担の方で約13,000円ほどであり高価なお薬となります・・・。(1ヵ月ごとあるいは4週間ごとの投与と考えると、こちらのお薬代だけでおよそ月額13,000円の治療!) しかし先述の通りこちらのお薬を始めた9割以上の方で頭痛がかなり顕著に改善するため、初回投与で改善効果を実感された患者さんのほぼ全員が治療を継続されます。毎月4日以上頭痛にお悩みの方は、積極的に投与を検討することが推奨されています。(こちらのお薬を“とっておき”にすることは推奨されておらず、なるべく早い段階での使用が勧められます)

片頭痛の治療<急性期治療薬>
片頭痛の急性期治療の理想的なゴールは、副作用・副反応なく片頭痛発作を確実に速やかに消失させ機能を回復させることで、薬物治療が中心となります。
急性期治療薬とは頭痛発作が生じた際に頓用で使用する薬剤、すなわち鎮痛薬(痛み止め)のことです。今まさに抱えている痛みをただちに抑えるには鎮痛薬を使用しなければなりません。“頭痛には痛み止め”、これは確かに間違いではありませんが、頻回に起こる頭痛発作に対して毎日のように(場合によっては一日のうちに何回も)鎮痛薬を服用し続けるのは大きな間違いです。→「薬剤の使用過多による頭痛」
これはもはや鎮痛薬への“依存”状態であり、最も避けなければならない事態です。そのためにも、頭痛が重度であればあるほど予防療法が大切であることを理解する必要があります。それを正しく理解したうえで急性期治療薬を適切に使用できれば、とても心強い味方となることでしょう。
では、そのような急性期治療薬にはどのような薬剤があるのでしょうか。

アセトアミノフェン
アセトアミノフェンの単剤投与は安全性が高く安価であり、通院を必要としない軽度~中等度の片頭痛発作には有効です。そうした患者さんの場合には急性期治療薬の第一選択薬として考えてよいでしょう。特に小児の片頭痛患者さんの場合にはイブプロフェンとならんで第一選択薬とすべきです。
しかし片頭痛患者さんは市販薬が効きにくくなったり頭痛が重度であったりした場合に医療機関を受診するケースが多いため、そのような場合には早期からトリプタンやジタンの使用を検討したほうがよいでしょう。
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●カロナール錠200・300
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●アセトアミノフェン錠200mg
非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs
NSAIDsの単剤投与は安全性が高く安価であり、通院を必要としない軽度~中等度の片頭痛発作には有効です。そうした患者さんの場合には急性期治療薬の第一選択薬として考えてよいでしょう。
しかし片頭痛患者さんは市販薬が効きにくくなったり頭痛が重度であったりした場合に医療機関を受診するケースが多いため、そのような場合には早期からトリプタンやジタンの使用を検討したほうがよいでしょう。
ロキソプロフェン
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●ロキソニン錠60mg
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●ロキソプロフェン錠60mg
ジクロフェナク
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●ボルタレン錠25mg
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●ジクロフェナクNa錠25mg
イブプロフェン
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●ブルフェン錠100・200
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●ブルフェン顆粒20%
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●イブプロフェン錠100mg・200mg
ナプロキセン
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●ナイキサン錠100mg
トリプタン
トリプタンは選択的セロトニン受容体作動薬といわれる薬剤です。セロトニンという神経伝達物質が結合する部分であるセロトニン受容体(5-HT1B5-HT1D、5-HT1F)に働き、血管を収縮させ、また血管を拡張させる物質の放出を抑えます。頭蓋内の血管が拡張することが片頭痛が生じる原因の一つと考えられていますので、これを抑えるわけです。血管を収縮させるという特徴から、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患のある方、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)の既往のある方、末梢血管障害の既往のある方には使用できません。また「片麻痺性片頭痛」や「脳幹性前兆を伴う片頭痛」などの特殊な片頭痛では前兆症状を悪化させる可能性があり禁忌とされています。
現在日本で使用できるトリプタン製剤は5種類あり、どれも片頭痛発作の抑制(痛み止め)として非常に有効ですが、それぞれの薬剤ごとに細かな違いや注意点があります。
スマトリプタン
最初に発売されたトリプタン製剤です。スマトリプタンキット皮下注はトリプタン製剤の中で最も効果発現が速く効果も高いです。しかし副作用(倦怠感、脱力感、悪心嘔吐、眠気など)も比較的出やすいとされています。
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●イミグラン錠50mg
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●イミグラン点鼻液20mg
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●イミグランキット皮下注3mg
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●スマトリプタン錠50mg
※現在イミグラン点鼻液20mg、イミグランキット皮下注3mgにつきましては薬剤供給困難となっており、全国的に入手困難な状況が続いております。安定供給再開のめどは立っておりません。
ゾルミトリプタン
トリプタン製剤の中ではリザトリプタンとならんで比較的副作用が少ないとされています。
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●ゾーミッグ錠2.5mg
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●ゾーミッグRM錠2.5mg
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●ゾルミトリプタン錠2.5mg
リザトリプタン
トリプタン製剤の中ではゾルミトリプタンとならんで比較的副作用が少ないとされています。
片頭痛予防薬の1つであるプロプラノロール(インデラル)との併用が禁忌ですので、注意が必要です。
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●マクサルト錠10mg / マクサルトRPD錠10mg
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●リザトリプタンOD錠10mg
エレトリプタン
グレープフルーツジュースとの併用が禁忌ですので、注意が必要です。
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●レルパックス錠20mg
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●エレトリプタン錠20mg
ナラトリプタン
他のトリプタン製剤と比較して効果発現が緩徐であることが特徴です。“ゆっくり長く効く”というイメージであり、ダラダラと頭痛発作が続く月経前~中の片頭痛に対して有効な場合があります。
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●アマージ錠2.5mg
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●ナラトリプタン錠2.5mg
ジタン<ラスミジタン レイボー錠50mg・100mg>
トリプタンと同様のセロトニン受容体作動薬ですが、こちらは5-HT1F受容体に選択的に作用します。そのため血管収縮を起こさないということがトリプタン製剤との最大の違いであり特徴です。さらにトリプタンを含む多くの急性期治療薬は頭痛が生じてから1時間以内に服用しなければ鎮痛効果が減弱し、服用のタイミングが非常に大切(早めに飲む!)ですが、ラスミジタンは服用のタイミングが遅れた場合にも有効です。まさにトリプタンの上位互換とも思えるような有効な薬剤ですが、唯一の欠点は副作用の出現率の高さです。特に薬剤の初回導入時(はじめて処方され服用した時)に現れやすく、約18.8%で浮動性めまいを認めます。
その他にも眠気や倦怠感などを認める場合もあります。そのため服用後には自動車運転は避ける必要があります。
片頭痛に対する鎮痛効果自体は非常に有効な薬剤なので、こうした副作用をなんとかコントロールできないかとさまざまな検討や投与方法の工夫がなされています。例えば夕食後や就寝前に服用することで、夜間眠っている間に副作用を気づかずにやり過ごすことができ、かつ作用時間が長いために翌朝の起床時に起こるであろう頭痛発作に対しては鎮痛効果をもたらす可能性があります。
また空腹時に服用するよりも、食後30分ほどしてから服用するほうが副作用の発現が抑えられたとする報告があります。日中や外出先ではトリプタンを使用し、自宅で過ごす時にはラスミジタンを使用するという使い分けも有用です。

レイボーの作用機序
- 片頭痛の病態には、中枢での痛シグナル伝達、及び末梢での三叉神経系の過活動が関係しているとされる(※1)。
また、視床や、大脳皮質、三叉神経系の神経細胞やシナプスに発現しているセロトニン1F受容体は、この疼痛シグナル伝達や三叉神経の過活動を調整している1)。 - レイボーはセロトニン1F受容体に選択的に結合するジタン系薬剤である。血液一脳関門通過性を有し、中枢では片頭痛疼痛シグナル伝達を抑制するほか、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質(CGRDやグルタミン酸など)の放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すと考えられている1)、2)。
ラットでは投与15分後までに血液一脳関門を通過した(ラット)3)。
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レイボーの服用方法
- 初回処方及び2回目以降の処方時におけるレイボーの量調節(1回当たりの服用量)
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