緊張型頭痛の病態
緊張型頭痛の病態や発生機序については不明な部分が多いですが、末梢性感作・中枢性感作による疼痛発生メカニズムが考えられています。
末梢性感作
頭頚部の筋群における頭蓋周囲筋・筋膜などに分布する侵害受容器の疼痛閾値が低下し、一次侵害受容ニューロンが痛覚過敏になる状態を言います。
- 稀発緊張型頭痛
- 頻発反復性緊張型頭痛
中枢性感作
筋肉・筋膜からの侵害刺激が長期間持続することにより、中脳水道周囲灰白質を中心とした下行性疼痛抑制系の機能が低下し、脊髄後角および三叉神経脊髄路核(三叉神経頚髄複合体 Trigeminocervical Complex : TCC)、二次侵害受容ニューロンにより中枢に感作を生ます。
- 慢性緊張型頭痛
緊張型頭痛の診断
緊張型頭痛は、頭痛発作の生じる頻度によって分類されます。
頭痛の日数が多いほど支障度は高くなり、慢性緊張型頭痛では治療で改善が得られにくいケースもあります。

稀発反復性緊張型頭痛
頻度がまれであり、一般に両側性で、性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽度~中等度で、数十分~数日間持続する頭痛。
痛みは日常的な動作により増悪せず、悪心は伴わないが、光過敏または音過敏を呈することがある。
稀発反復性緊張型頭痛の診断基準
- A 平均して1ヵ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす
- B 30分~7日間持続する
- C 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
- ① 両側性
- ② 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
- ③ 強さは軽度~中等度
- ④ 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
- D 以下の両方を満たす
- ① 悪心や嘔吐はない
- ② 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
頻発反復性緊張型頭痛
頭痛の頻度が高く、一般に両側性で、性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽度~中等度で、数十分~数日間持続する頭痛。
痛みは日常的な動作により増悪せず、悪心は伴わないが、光過敏または音過敏を呈することがある。
頻発反復性緊張型頭痛の診断基準
- A 3ヵ月を超えて、平均して1ヵ月に1~14日(年間12日以上180日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす
- B 30分~7日間持続する
- C 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
- ① 両側性
- ② 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
- ③ 強さは軽度~中等度
- ④ 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
- D 以下の両方を満たす
- ① 悪心や嘔吐はない
- ② 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
慢性緊張型頭痛
頻発反復性緊張型頭痛から進展した疾患で、連日または非常に頻繁に発現し、一般に両側性で、性状は圧迫感または締めつけ感、強さは軽度~中等度で、数時間~数日間、または絶え間なく持続する頭痛。
痛みは日常的な動作により増悪しないが、軽度の悪心、光過敏または音過敏を呈することがある。
慢性緊張型頭痛の診断基準
- A 3ヵ月を超えて、平均して1ヵ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する頭痛で、かつB~Dを満たす
- B 数時間~数日間、または絶え間なく持続する
- C 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
- ① 両側性
- ② 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
- ③ 強さは軽度~中等度
- ④ 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
- D 以下の両方を満たす
- ① 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもどちらか一方のみ
- ② 中等度・重度の悪心や嘔吐はどちらもない
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
緊張型頭痛の治療
緊張型頭痛の治療には ①急性期治療、②予防療法 の2種類があります。
頭痛発作がごくまれにしか生じない稀発反復性緊張型頭痛では、痛みに対して鎮痛薬を服用するという ①急性期治療 のみでよいですが、頭痛の頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛や慢性緊張型頭痛では ②予防療法 をしっかりと行うことが大切です。 予防療法を行い頭痛発作の頻度や急性期治療薬の使用頻度を減らすことで、薬剤の使用過多による頭痛への移行を防止する必要があるためです。

急性期治療
急性期治療はアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による薬物療法が主体です。
アセトアミノフェン
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●カロナール錠200・300
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●アセトアミノフェン錠200mg
非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs
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●ロキソニン錠60mg
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●ロキソプロフェン錠60mg
ジクロフェナク
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●ボルタレン錠25mg
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●ジクロフェナクNa錠25mg
イブプロフェン
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●ブルフェン錠100・200
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●ブルフェン顆粒20%
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●イブプロフェン錠100mg・200mg
ナプロキセン
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●ナイキサン錠100mg
他には『チザニジン』の適応外使用が認められています
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●テルネリン錠1mg
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●チザニジン錠1mg
中枢性α2アドレナリン受容体作動薬
脊髄γ運動ニューロンおよび上位中枢を抑制して、固縮寛解作用、脊髄反射抑制作用などの筋緊張緩和作用、脊髄後角ニューロンの侵害刺激に対する反応を抑制し鎮痛作用を発揮します。
予防療法
頻発反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛では予防療法の適応があります。
三環系抗うつ薬
高い有効性を示し、第一選択薬となります。しかし忍容性が低いため少量投与から開始し、副作用として眠気や口渇などに注意する必要があります。
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●アミトリプチリン10mg
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●トリプタノール錠10mg
緊張型頭痛は頭全体を包むような鈍痛や圧迫感が特徴的です
緊張型頭痛は頭痛の中で最も多く、一般的な頭痛の一種で、頭全体を包むような鈍痛や圧迫感が特徴的です。
急激な発作ではなく、ゆっくりと進行するのが特徴で、頭痛の発作が頻繁に起こる場合、慢性的な緊張型頭痛と呼ばれることがあり、月に15日以上の頭痛が3か月以上続く状態を指すことがあります。
緊張型頭痛の痛みは通常、頭全体に広がり、軽度から中程度のもので、締め付けられている感覚や圧迫感が特徴的です。
光や音に対する感受性が低く片頭痛とは異なりますが、症状の原因ははっきりしておらず、ストレス、不規則な食事習慣、不足した睡眠、不良な姿勢、眼の疲れなどがトリガーとなることがあります。
これまで薬物による治療を説明してきましたが、緊張型頭痛は姿勢異常によるものであり、姿勢矯正(猫背や前傾姿勢をさけて背筋をまっすぐに!)がきわめて重要です。
