認知症治療薬
『レケンビ(レカネマブ)』とは?
レケンビ(レカネマブ)は、「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」に対する注射薬です。主としてAβプロトフィブリルに作用します。アミロイドβ(Aβ)が集まってかたまりになる途中の物質をAβプロトフィブリルと言います。レケンビはこのAβプロトフィブリルにくっつくことで、ミクグリアという異物を排除する細胞に認識させて引き寄せ、脳内に蓄積したAβを除去させます。その結果、脳のAβが減少してアルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されます。

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出典:エーザイ社WEBサイト
アルツハイマー病の治療薬には、①今出ている症状を緩和するための薬と、②病気の進行を遅らせるための薬がありますが、レカネマブは疾患修飾薬(DMT)という②病気の進行を遅らせるための薬であり、認知機能の低下をゆるやかにすることが期待されています。
薬物療法を行ったときの認知機能の変化
アルツハイマー病では、時間経過とともに認知機能の低下は必ず進行してしまいます。残念ながら、現時点では認知症を「改善する」治療はありません。しかし、適切な薬物治療を行うことで、認知症の「進行を遅らせる」ことは可能な場合があります。
たかが一時的な効果と思われるかもしれませんが、認知症の進行が数ヵ月遅らせることは、患者様ご本人はもとより介護にあたるご家族の負担を大きく減らすことができ、その意義は極めて大きいと考えられます。
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レカネマブ投与における適応条件
レカネマブ治療は希望すれば誰でも受けられるわけではありません。レカネマブ初回投与時の患者要件は以下の通りで、これら全てに該当しなければならず、その判定は主治医を含む認知症治療に携わる医療従事者によって行われます。
- ①患者本人及び家族・介護者の、安全性に関する内容も踏まえ本剤による治療意思が確認されていること。
- ②本剤の禁忌項目に該当しないこと。
- 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴がある患者。
- 本剤投与開始前に血管原性脳浮腫、5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症又は1cmを超える脳出血が認められる患者。
- ③MRI 検査(1.5 Tesla 以上)が実施可能であること。(例:金属を含む医療機器(MR 装置に対する適合性が確認された製品を除く)を植込み又は留置した患者は不可)
- ④認知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲が以下の(a)及び(b)の両方を満たすことが、投与開始前1か月以内の期間を目安に確認されていること。
- (a)認知機能評価 MMSEスコア20点以上、28点以下
- (b)臨床認知症尺度 CDR全般スコア 0.5 又は 1
- 独居者の場合は、患者の周囲の者・地域包括支援センター・医療ソーシャルワーカー等の協力を得て独居者の日常生活の様子を聴取することで客観的な評価を行い、CDR 全般スコアを評価すること。ただし、患者の周囲の者・地域包括支援センター・医療ソーシャルワーカー等からの情報が得られない等、CDR 全般スコア評価が困難な場合は、他の評価方法により認知症の重症度の範囲が同等であることを確認した上で用いること。
- ⑤ ①~④を満たすことを確認した上で、アミロイド PET 又は脳脊髄液(CSF)検査を実施し、Aβ 病理を示唆する所見が確認されていること。なお、タウ蓄積に関しては、添付文書の効能又は効果に関連する注意において、本剤の投与に先立ち、Aβ 病理に関する検査結果、AD の病期、flortaucipir(18F)を用いた PET 検査を実施した場合はその結果等を考慮した上で、本剤投与の可否を判断することと記載されているが、現時点におけるタウ PET 検査の医療実態等を踏まえ、当面の間はタウ蓄積の検査を求めないこととする。
当クリニックを受診された方で、レカネマブ治療を希望される方は提携医療機関へ紹介させていただくことが可能ですので、お気軽にご相談ください。
レケンビ(レカネマブ)による治療スケジュール
毎回約1時間かけて点滴投与する薬です。
レケンビ(レカネマブ)は、2週間ごとに通院していただき、毎回約1時間かけて点滴投与する薬です。
※レケンビ(レカネマブ)治療は当クリニックで初回から始めることはできません。治療の開始にあたっては、指定を受けた医療機関(導入施設)で行う必要があり一般的には大きな総合病院が該当します。これは、以下に記載する副作用のためで、脳出血などの急変に即座に対応できることが条件であるからです。導入施設で6カ月間治療を継続し、経過が安定している場合には、以降の治療はフォローアップ認定施設で行うことが可能になります。当クリニックはこのフォローアップ認定施設であり、大きな副作用がなく治療経過が安定されている方ではレケンビ治療を当クリニックで継続していただくことができます。
投与の方法と間隔
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出典:エーザイ社WEBサイト
レケンビを初めて投与する前にはMRI検査が必要です。また治療開始後では、5回目の投与前(投与開始後2ヵ月までを目安)、7回目の投与前(投与開始後3ヵ月までを目安)、14回目の投与前(投与開始後6ヵ月までを目安)にMRI検査を実施します。これ以外のタイミングでも、主治医の判断により必要に応じてMRI検査を実施する場合があります。
なお、薬の投与中は6ヵ月ごと、また投与開始後18ヵ月を目安に、医師が症状に基づき薬の効果や病気の進み具合などを確認し、レケンビでの治療の継続または中止を判断します。またそれ以外にも、副作用の発現状況を評価し、医師が治療の中止を判断する場合もあります。
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投与後に注意しなければいけないことは?
アミロイド関連画像異常 Amyloid-related imaging abnormalities(ARIA)という副作用があらわれることがあります。
アミロイド関連画像異常Amyloid-related imaging abnormalities(ARIA)
レケンビのように、Aβを減少させる薬を使用すると、アミロイド関連画像異常(ARIA)という副作用が現れることがあります。ARIAは、脳からAβが除去される際に、一時的に血液や血漿(血液中の水分などの成分)が血管の外に漏れ出すことで起こるといわれており、これにより脳のむくみ(ARIA-E)や脳の中で出血やヘモジデリン沈着(ARIA-H)が起こることがあります。
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ARIAの有無はMRI検査で確認することができるので、レケンビの投与を開始した後は、5回目、7回目、14回目の投与前にMRI検査を実施します。それ以降も医師の指示により、定期的にMRI検査を受けるようにしてください。

点滴に伴う反応infusion reaction
また点滴に伴う反応として頭痛、悪寒、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがありますが、infusion reactionを疑う症状があれば医師や看護師がすぐに対応いたします。
レケンビ(レカネマブ)の薬価と費用
レケンビには200mg/2mLと500mg/5mLの2種類の規格があり、それぞれの薬価は以下の通りです。
- 200mg / 2mLバイアル(瓶)45,777円/瓶
- 500mg / 5mLバイアル(瓶)114,443円/瓶
薬の効果は同じですが、体重によって投与量が決まるため、投与量に応じたバイアルと本数が選択されます。
高価な薬ですので、高額医療制度の対象となります。高額療養費制度とは、年齢や年収に応じた限度額を超えた場合に、超過分の医療費が払い戻される制度です。事前に限度額適用認定証を取得しておくことで、窓口での支払い額が自己負担額までで抑えられます。さらにマイナンバーを健康保険証として利用することで、限度額適用認定証の申請手続きや提示が不要となります。詳しくはクリニック窓口までお問合せください。