MRI即日検査可能 滋賀のあたまのクリニック

片頭痛

片頭痛の誘発因子・増悪因子

片頭痛が生じやすくなる原因や悪くなりやすい原因としては以下のものが挙げられます。

片頭痛の誘発因子・増悪因子

甲状腺機能異常と片頭痛の関連についての報告があり、片頭痛を有する割合が甲状腺機能低下症のある方(53%)のほうが、そうでない方(38%)と比較して有意に多かったと報告されています。しかし片頭痛患者における甲状腺機能異常についての報告はまだ少なく、甲状腺機能異常が片頭痛の原因となるかどうかについては今後も検討を続けていく必要があります。

片頭痛全体としては、男女とも加齢とともに改善・寛解することが多いですが、更年期には増悪する場合もあります。

片頭痛による経済的損失

片頭痛は個人の生活に支障をきたすだけではなく、社会に与える影響も多大です。

というのも、片頭痛有病率のピークは男女とも生産年齢(15~65歳)であり、学業や仕事に影響するからです。
片頭痛による損失にはアブセンティーイズム(欠勤・休業)とプレゼンティーイズム(労働遂行能力低下)の2つがあります。
つまり片頭痛がひどくて仕事を休む場合と、出勤はするものの体調が悪いために本来の仕事内容を行えない場合です。
どちらも重大な問題ですが、アブセンティーイズム以上にプレゼンティーイズムによる損失がより深刻な経済的損失を生み出していると考えられています。

日本においては、片頭痛によるプレゼンティーイズムにより年間3,600億円~2兆3,000億円の経済的損失が発生していると推計されています。
にもかかわらず、日本では片頭痛患者の約7割は医療機関を受診していないことが明らかとなっています。
頭痛のある方自身が“頭痛は仕方ないもの”と思わずに頭痛外来を受診すること、そして職場全体が組織として片頭痛に対して正しく理解し、片頭痛患者をケア・受診できるようにする環境整備が重要なのです。

片頭痛による経済的損失

片頭痛の診療

頭痛に困って医療機関を受診される方は、頭痛によって日常生活に大きな苦痛と支障を抱えている場合が多いです。
そうした方に対しては、頭痛専門外来でのより専門性の高い診療が必要です。

「おそらく片頭痛でしょう。とりあえずロキソニンやトリプタンなどの痛み止めを出しておくので、これで様子をみましょう。」という診療は最も悪い診療の一例です。こうした診療を受けたことのある方、頭痛はよくなりましたでしょうか?

“鎮痛薬を服用してひとまずその時の頭痛は改善した”、これは頭痛治療ではありません。
頭痛治療とは、そもそも頭痛が起こる頻度や頭痛の強さを軽減させ、頭痛が起こるために低下してしまっている日常生活の質を改善することです。
そうした頭痛診療を行うのが頭痛外来です。

片頭痛の診療

頭痛診療で使用するツール

頭痛ダイアリー

頭痛ダイアリーとはその名の通り日々の頭痛に関しての日記帳です。
頭痛ダイアリーを記録することで、①頭痛日数、②頭痛の正常、③痛みの強さ、④持続時間、⑤随伴症状(頭痛に伴って起こる他の症状)、⑥誘発因子(頭痛が起こる原因・条件)、⑦薬剤使用状況、⑧生活支障度などを具体的に確認することができます。
そのため診察する医師にとっては通常の問診のみと比べて個々の頭痛に対する正しい診断率の向上に役立つだけでなく、患者さん本人にとっても自身の頭痛が生じる傾向が把握できることがあります。頭痛が重度であればあるほど頭痛診療にとって必要不可欠ともいえるツールですので、ぜひご活用ください。

頭痛ダイアリー

頭痛診療における画像検査

当クリニックではご案内の通りMRIを導入しており、脳や脳血管をただちに評価することができます。
これまでに頭痛についての検査を受けたことがない方、過去に頭痛で受診し画像検査を受けたことがあっても最近頭痛が増悪してきたり、これまでとは違う頭痛やその他の症状を伴ったりする方はMRI検査を行っておくべきです。これは、脳卒中や脳動脈解離などの重度疾患で生じる頭痛が片頭痛での痛みと酷似している場合があるからです。

“以前から時々頭痛があり過去にCTやMRI検査を受け“異常なし”と診断された方が、最近似たような頭痛が毎日続くようになり片頭痛の悪化だと思っていたら手足の麻痺や呂律が回りにくくなるといった症状が加わり、画像検査を受けたら脳出血だった”というようなケースを経験します。脳疾患が重症化するケースが多く早期対応がきわめて重要であるため、診察上必要と判断した場合には検査を推奨しています。

頭痛診療における画像検査

画像検査を行ったほうがよいケース

  • 初回の頭痛発作の場合
  • 頭痛発作が通常と異なるまたは長期に及ぶ場合や前兆が長引く場合
  • 頭痛発作頻度や重症度(強さ)が増加した場合
  • 今までで最悪の頭痛である場合
  • 脳幹性前兆(呂律が回りにくい、回転性めまい、耳鳴、難聴、物が二重に見える、運動失調、意識障害)を伴う場合
  • 錯乱を伴う場合
  • 運動症状を伴う場合
  • 50歳以上で初発の場合
  • 前兆のみで頭痛を伴わない場合
  • 頭痛側または前兆側(右か左か)が常に固定している場合
  • 外傷後に生じた頭痛の場合

これらに該当する場合、以前に画像検査を受けたことがあるかどうかは関係なく、画像検査を行うことが勧められます。

片頭痛の診断

ひと言に“片頭痛”といっても、実は複数の細かな分類があります。そもそも片頭痛なのかどうかのみならず、片頭痛の中でもさらに病型によって薬剤などの治療法が異なってくるため、頭痛専門外来ではより正確な頭痛診断が必要です。

前兆のない片頭痛

頭痛発作を繰り返す疾患で、発作は4~72時間持続する。片側性、拍動性の頭痛で、中等度~重度の強さであり、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴であり、随伴症状として悪心や光過敏・音過敏(あるいはその両方)を伴う。

診断基準

  • A B~Dを満たす発作が5回以上ある
  • B 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
  • C 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
    1. ① 片側性
    2. ② 拍動性
    3. ③ 中等度~重度の頭痛
    4. ④ 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
  • D 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
    1. ① 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
    2. ② 光過敏および音過敏
  • E ほかに最適なICHD-3の診断がない

片頭痛診断の落とし穴

片頭痛という病名をみてみると、“片”という字が入っています。このことから一般的に片頭痛ではあたまの“右か左の片側”に痛みが生じると思われていることが多く、医師の中にすら「両方のこめかみが痛いなら片頭痛じゃないね」「ギューっと締め付けられるような痛みなので緊張型頭痛(肩こり頭痛)でしょう」というような誤診を時々みかけます。もうひとつの片頭痛の特徴としてよく知られているのが、“ズキズキ”、“ガンガン”、“脈打つような”といういわゆる拍動性の痛みです。たしかに片頭痛の痛みは拍動性である場合が多く、決して間違ってはいません。しかし必ずしもそうとは限らないのです。
上記の診断基準のC項目を見ながら次の例を考えてみましょう。

左右関係なく頭全体が締め付けられるように痛む。頭痛は非常に重度で出かけることができず、学校や仕事を休んでしまうことがある。

どうでしょうか。頭痛診療でよく見かけるパターンですが、片側性でも拍動性でもなく①、②に該当しません。しかし重度の痛みで日常動作を避けてしまっているので③、④の2項目を満たし、片頭痛の診断基準に該当します。このように一般的に知られている片頭痛の典型像にあてはまらない片頭痛が存在します。こうしたケースで誤診せず、適切な診断と治療を行うために頭痛専門外来が重要なのです。

前兆のある片頭痛

数分間持続する、片側性完全可逆性の視覚症状、感覚症状またはその他の中枢神経症状からなる再発性発作であり、これらの症状は通常徐々に進展し、また通常それに引き続いて頭痛が生じ、片頭痛症状に関連すると考えられている。

診断基準

  • A BおよびCを満たす発作が2回以上ある
  • B 以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある
    1. ① 視覚症状
    2. ② 感覚症状
    3. ③ 言語症状
    4. ④ 運動症状
    5. ⑤ 脳幹症状
    6. ⑥ 網膜症状
  • C 以下の6つの特徴の少なくとも3項目を満たす
    1. ① 少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展する
    2. ② 2つ以上の前兆が引き続き生じる
    3. ③ それぞれの前兆症状は5~60分持続する
    4. ④ 少なくとも1つの前兆症状は片側性である
    5. ⑤ 少なくとも1つの前兆症状は陽性症状である
    6. ⑥ 前兆に伴って、あるいは前兆出現後60分以内に頭痛が出現する
  • D ほかに最適なICHD-3の診断がない

前兆にはさまざまな症状が含まれます

前兆にはさまざまな症状が含まれますが、①~③の3つを典型的前兆といい、さらに前兆のうち90%は①視覚性前兆です。

  1. ① 視覚性前兆

    視覚性前兆として最もよくみられるのが「閃輝暗点(せんきあんてん)」です。“視野の中心付近にジグザグした形が現れ、右や左方向に徐々に拡大し、閃光で縁取られ、その結果視界が欠ける”といった現象です。“光る歯車が見える・大きくなる・増える”や“視界の縁のほうから欠けてくる”という表現などもあります。

  2. ② 感覚症状

    次に頻度が多いのは感覚障害です。チクチク感として現れ、発生した部位から片側の身体・顔面・舌へ広がることが多いですが、最初から感覚の鈍さを生じ、それが唯一の感覚症状である場合もあります。

  3. ③ 言語症状

    さらに頻度は下がりますが言語症状が現れることがあります。通常、うまく言葉が出てこなくなる症状(失語)がみられます。

慢性片頭痛

頭痛が月に15日以上の頻度で3ヵ月を超えて起こり、少なくとも月に8日の頭痛は片頭痛の特徴をもつ。

診断基準

  • A 片頭痛様または緊張型頭痛様の頭痛が月に15日以上の頻度で3カ月を超えて起こり、BとCを満たす
  • B 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たすか、1.2「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が、併せて5回以上あった患者に起こる
  • C 3か月を超えて月に8日以上で、下記のいずれかを満たす
    1. ① 「前兆のない片頭痛」の診断基準B~Dを満たす
    2. ② 「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす
    3. ③ 発作時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンあるいは麦角誘導体で改善する
  • D ほかに最適なICHD-3の診断がない

慢性片頭痛の有病率は1.4~2.2%とされています。頭痛発作の日数が多く、片頭痛の重症型といえます。対して頭痛発作の日数が月に4~14日である状態が3か月にわたってみられるものを「反復性片頭痛」と呼びますが、反復性片頭痛の方の年間約3%が「慢性片頭痛」へと悪化します。片頭痛が慢性化すると非常に厄介で、必然的に鎮痛薬の使用頻度も増えるため、後述する「薬剤の使用過多による頭痛」を合併する、あるいは初診時にすでに合併しているケースが多いです。さらにはそうしたつらい日々のせいで不安や抑うつを合併していることもあります。当然、治療が難航する頻度も上昇します。そのため片頭痛の治療は的確かつ早期になされるべきなのです。

慢性片頭痛では、すでにどの急性期治療薬(鎮痛薬)もほとんど効かなくなってしまっていることが多いです。慢性片頭痛のゴールは、片頭痛の完全寛解や治癒(頭痛ゼロ)ではなく、発作頻度・重症度・慢性片頭痛の期間を減らすことであり、日常生活機能・動作を改善させることにあります。一方で慢性片頭痛の急性期治療(痛み止めの使用)については、「薬剤の使用過多による頭痛」への移行を阻止するため、使用日数を制限(週に2日以下)することが望ましいとされます。それを達成するために大切なことは、有効な痛み止めを探すことではなく、しっかりとした予防療法を行うことです。

片頭痛の治療

片頭痛治療の主な目的は、痛みの軽減、生活機能の回復、頭痛頻度の減少などであり、反復性頭痛(月に4~14日)から慢性片頭痛(月に15日以上)への進行を防ぐことも含まれます。治療には薬物療法(お薬による治療)としての急性期治療と予防療法の2つがあり、その他に非薬物療法(お薬以外による治療)としてニューロモデュレーション(神経刺激治療)などがあります。
実際に身近な医療機関で実施できる治療としては薬物療法が中心となります。

片頭痛の治療

片頭痛の治療<予防療法>

片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方では、予防療法が推奨されます。また日数だけでなく、急性期治療(鎮痛薬)のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合、急性期治療薬が使用できない場合、永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛の場合にも予防療法を行うことが推奨されます。

片頭痛予防療法のゴールは、①片頭痛の発作頻度の減少・重症度の軽減と持続時間の短縮、②急性期治療への反応性の改善、③生活機能の向上と生活への支障の軽減 です。これらの達成を目指し、それぞれの患者様の頭痛の特徴や基礎疾患などのバックグラウンドを考慮しながら、最適と思われる治療薬を選択します。予防療法はいわば“頭痛発作の起こりにくい体づくり”であり、即効性のあるものではありません。効果が実感できるタイミングは人によりばらつきがありますが、多くの方では翌日~2,3週間以内に頭痛の改善を感じる方が多いように思います。最初に始めてみたお薬で頭痛の改善が得られない場合には、他のお薬に変更してみる・量を増やしてみるといったことを試します。

片頭痛の治療<片頭痛予防薬>

予防療法として処方する薬剤には経口投与薬(飲み薬)と、CGRP関連薬剤という皮下注製剤(オートインジェクター)があります。
これらは一般的によく使用される薬剤であり、すべて全国の医療機関で処方されており、大きな専門病院とクリニックとで違いはありません。

※皮下注製剤(オートインジェクター)については処方できる医師が限定されて、どの医療機関でも処方できるというわけではありません。当クリニックではもちろん処方可能です。

経口薬

CGRP関連薬剤

CGRP関連薬剤について

2021年に保険収載され日本でも使用可能となった片頭痛予防薬です。その有効性と安全性の高さからアメリカやヨーロッパでは第一選択薬(片頭痛と診断されたら最初に使用すべき薬剤)となっており、日本でも高い推奨度となっています。それまで片頭痛の予防治療薬として上記の経口薬しかなく、なかなか治療がうまくいかないケースも多かった中で、ようやく登場となり、瞬く間にその高い有効性が確認され“片頭痛治療における革命”ともいわれている薬剤です。急性期治療薬に頼ることなく予防療法の段階で片頭痛をコントロールすべきという考えが常識となっており、間違いなく予防療法の中心となってきています。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide: CGRP)とは、片頭痛発作を起こす直接原因となっている神経伝達物質です。
この片頭痛を起こすCGRPの作用をブロックすることで高い片頭痛抑制効果を発揮します。現在、各製薬会社から3種類の製品が発売されています。

CGRP関連薬剤の作用機序

  • すべてのCGRP関連薬剤は同じ経路に作用するが、抗体の種類や標的は異なる。
  • ガルカネズマブは1gG4抗体で、CGRPに高い親和性と選択性を有する。
CGRP関連薬剤の作用機序

片頭痛の治療<急性期治療薬>

片頭痛の急性期治療の理想的なゴールは、副作用・副反応なく片頭痛発作を確実に速やかに消失させ機能を回復させることで、薬物治療が中心となります。
急性期治療薬とは頭痛発作が生じた際に頓用で使用する薬剤、すなわち鎮痛薬(痛み止め)のことです。今まさに抱えている痛みをただちに抑えるには鎮痛薬を使用しなければなりません。“頭痛には痛み止め”、これは確かに間違いではありませんが、頻回に起こる頭痛発作に対して毎日のように(場合によっては一日のうちに何回も)鎮痛薬を服用し続けるのは大きな間違いです。→「薬剤の使用過多による頭痛」
これはもはや鎮痛薬への“依存”状態であり、最も避けなければならない事態です。そのためにも、頭痛が重度であればあるほど予防療法が大切であることを理解する必要があります。それを正しく理解したうえで急性期治療薬を適切に使用できれば、とても心強い味方となることでしょう。 では、そのような急性期治療薬にはどのような薬剤があるのでしょうか。

片頭痛の治療<急性期治療薬>

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