頭部外傷(けが)にも院内のMRI機器で
即時検査が可能です
大きな病院での救急診療において、頭部や顔面の外傷(ケガ)は非常に多いです。
そして軽症から最重症までその重症度はさまざまです。ケガの原因もまた多岐にわたります。
下記のようなアクシンデントなど、その他いろいろなケースで頭部外傷は突然生じます。
そして”あたま”ということでご本人やご家族の方はとても心配されます。
- 交通事故
- 屋外活動での事故(登山中の滑落、庭での作業中に脚立から転落、散歩中に転倒・溝にはまるなど)
- スポーツ
- 仕事中の事故(労災)
- 高齢者の自宅や施設内・外出先・移動中の転倒、車椅子から転げるなど
- 学生・児童の学校や施設でのケガ、遊んでいる時に生じたケガ
- 乳児のチャイルドシートや車、椅子やソファやベッドなどからの転落、親が抱っこしていて落としてしまった
当クリニックでは脳神経外科専門医が診察にあたりMRIの即時検査が可能であるため、こうした頭部外傷に対応することが可能です。
当クリニックは「ちょっとしたあたまのケガ」や「たぶん大丈夫だとは思うけれど”あたま”だから心配、一応診てほしい」といったケガについて、気軽に受診でき、かつしっかりと検査も行い安心していただけるクリニックを目指しております。
もちろん当クリニック受診中に容態が悪化されたり、検査の結果予想より重症であることが判明したりした場合には迅速に近隣医療機関へ紹介、場合によっては救急搬送の手配をいたします。
頭部外傷の診察
頭部外傷の重症度判定の入口は意識障害の有無です。
脳損傷の重症度は受傷後の意識障害の程度によって表され、その意識障害の評価にはGlasgow Coma Scale (GCS) またはJapan Coma Scale (JCS) が用いられます。
頭部外傷では、一見たいしたことがなさそうでも後に状態が悪くなることがときどきあります。そのため、頭部の画像検査(CTやMRI)をすぐに実施できる施設での診療が好ましいです。
軽症頭部外傷
軽症頭部外傷とは入院を必要としない程度の頭部外傷です。頻度としてはこちらが最も日常的に頻繁にみられるものです。
軽症頭部外傷においても、以下に該当する場合には頭蓋内病変を合併している危険性があり、画像検査を行うべきです。
下記に該当しない場合でも、慎重な評価が必要と判断された際には画像検査を行うべきです。
画像検査が必要な項目
受傷歴が不明
どんな状況でケガをしたのか断定できない、目撃情報があいまい
外傷後健忘が持続している
ケガをした後のことが思い出せない(事故の後の行動、病院を受診するまでのことを覚えていない)
30分以上の逆行性健忘
ケガをするより30分以上前のことが思い出せない
頭蓋骨(陥没または頭蓋底)骨折の臨床徴候を含む肋骨より上の外傷
あたまや顔が歪んでいる・へこんでいる、目や耳の周りにアザができているなど
激しい頭痛
打ったところが痛むのは当然ですが、それ以外に頭全体が痛いなど
嘔吐
外傷後、嘔吐した
局所神経症状
手足にうまく力が入らない(片麻痺)、手足がしびれる・触れている感覚がわかりにくい(感覚障害)、ろれつが回らない、会話が成り立たない(言語障害)など
痙攣
身体が大きくガクガクと震える、一部がピクピクと意図せずに動く
2歳未満
筋肉量などの身体的脆弱性に加えて、頭部の比重が大きい(小さなこどもは頭でっかち)ので一見軽いケガでも予想以上に大きな負荷が頭部にかかっている可能性があるため
60歳以上
加齢による身体的脆弱性に加えて、脳萎縮や基礎疾患などにより頭蓋内出血の危険性が高いため
凝固障害
血液をサラサラにする薬剤を使用している、出血しやすい病気である
高エネルギー外傷
64km/h以上の速度での自動車事故、車の大破・横転、運転席の30cm以上の圧縮、車内からの救出に20分以上かかる、6m以上の転落、車と歩行者の事故、32km/h以上の速度での二輪車事故
アルコールまたは薬物中毒
アルコールや薬物の影響により、症状があてにならないケースがあるため慎重な評価が必要(頭蓋内で出血していても「どうもない、大丈夫」と言い、後に急変したりします)
スポーツ頭部外傷
体や頭を強く打つ機会の比較的多いスポーツでは脳震盪が問題となる場合があります。脳震盪を起こしやすいスポーツとしてはラグビー、柔道、サッカー、体操、ホッケー、アメリカンフットボールなどが挙げられます。また練習中よりも試合中に多いです。
脳震盪
脳震盪とは、頭部外傷により生じる意識消失、健忘(一時的な記憶喪失)、精神心理学的異常、頭痛、めまい、不安定感などの自覚症状をともなう一時的な脳機能障害のことを指します。脳震盪が生じるメカニズムは明確にはわかっておらず、脳震盪を明確に診断する検査はありません。
脳震盪からの回復には7〜10日ほどかかるといわれており、若年者ではより長期間を要する傾向があります。また、小児では脳震盪からの回復過程で突然の悪化を認めることがあり、慎重な経過観察が必要です。
脳震盪を起こした後は症状消失まで十分に休息をとり、1日ずつ運動強度をあげてスポーツ現場に復帰する「段階的復帰」が推奨されています。
脳震盪後早期の休息は明らかに有益であるが中〜長期的には休息が有益とはいえないという報告や、中等度の運動や有酸素運動が脳震盪の回復においてむしろ良い影響を与える可能性があり、今後も検討が必要です。
慢性外傷性脳症
脳震盪を繰り返すことによって慢性外傷性脳症に陥る可能性があります。これは繰り返す脳損傷によって脳細胞が変性し認知機能障害、うつ状態、行動異常などをきたす病態です。こちらは脳震盪とは違い、回復することはないと考えられています。慢性外傷性脳症に関わりのあるスポーツとしてボクシング、アメリカンフットボール、レスリングなどが挙げられていますが、他のスポーツでも報告がみられるため、広く認識しておかなければならない病気でしょう。
慢性外傷性脳症の診断にはMRIが有用であると考えられています。
慢性硬膜下血腫
高齢者によくみられる疾患です。はっきりとした機序は不明ですが、頭蓋骨の中で脳を包んでいる硬膜という組織の下(脳側)にある程度の期間をかけて徐々に血液のような液体がじわじわと溜まり、次第にやわらかい脳を圧迫して変形させます。脳の変形がわずかである初期には無症状ですが、ある一定量を超えてくると歪んだ脳が悲鳴をあげて症状を呈します。よくみられる症状としては片方の手足の動かしにくさ(実際には“歩きにくい”、“身体が左右どちらかに傾く”、“ものをよく落とす”といったことで気づかれます)、認知機能低下(“会話が成り立たない”、“おかしな事を言う”など)、頭痛などが挙げられます。
頭部打撲した直後ではなく、1〜3ヶ月後ぐらいに上記のような症状が出現して医療機関を受診し、頭部画像検査(CT、MRI)を受けて診断されるケースがほとんどです。症状をきたしている慢性硬膜下血腫が診断されたら、脳神経外科でこの脳を圧迫している液体を取り除く手術(症状によっては術後のリハビリも)を行うこととなるため、基本的に入院となります。脳の変形がほとんどなく症状がないか軽微である場合には外来での薬物治療となる場合もあります。
当クリニックでは、高齢の方があたまのケガで受診され診察および検査の結果軽症と診断しご帰宅いただく際には、「現時点では心配ありませんが、今後慢性硬膜下血腫を発症する可能性があります」という事を説明し、頭部外傷後の注意書きを配布させていただいております。
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●慢性硬膜下血腫のCT画像
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●慢性硬膜下血腫のMRI画像
重症頭部外傷
重症頭部外傷とは入院での治療を必要とする頭部外傷です。緊急手術となるケースも多くあり、速やかな脳神経外科専門医のいる救急病院での対応が必要となります。実際には頭蓋内出血や頭蓋骨骨折を認める場合や、それらがはっきりとは認められなくても意識が悪かったり、けいれん(ずっとではなく数秒など短時間のこともあります)していたり、呼吸や血圧・脈が不安定であったりする場合が多いです。
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●脳挫傷のCT画像
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●急性硬膜下血腫のCT画像
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●急性硬膜外血腫のCT画像
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●外傷性くも膜下出血のCT画像