尿酸とは
尿酸は水に溶けにくい白色結晶であり、ヒトや多くの霊長類におけるプリン代謝の最終代謝産物です。哺乳類では一般的に尿酸は肝臓の尿酸酸化酵素の働きで水に溶けやすい物質(アラントイン)に変化し、腎臓から尿として排泄されます。
これに対してヒトでは尿酸酸化酵素の働きを失活させる遺伝子変異が存在し、腎臓から排泄される最終代謝産物は尿酸です。さらにヒトは腎臓に効率的な尿酸再吸収機構を備えていることから、他の哺乳類と比較して血清尿酸値が高くなっており、これがヒトにおいて高尿酸血症・痛風が認められる原因です。

尿酸は生活習慣病としての高尿酸血症や痛風、尿路結石の原因となる一方、体内に最も高濃度に存在する抗酸化物質であり、霊長類の寿命の長さに関連しているという報告や運動時における酸化ストレスの軽減に寄与しているとの報告があります。
プリン体とはプリン環という化学構造をもつ物質の総称で、プリン塩基(アデニン、グアニン等)、プリンヌクレオチド(ATP、GTP等)が含まれます。
高尿酸血症
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が高尿酸血症と定義されます。
高尿酸血症は遺伝的背景に加えて環境要因が大きく関与する生活習慣病であるとされ、特に現代の食生活習慣の変化に伴い痛風・高尿酸血症の患者数は著しく増加しています。アルコール飲料や内臓などのプリン体を豊富に含む食材の大量摂取や、尿酸の排泄障害がその原因になることが知られています。
高尿酸血症は圧倒的に男性に多く、頻度は成人男性の約20%、最も多い30代男性においては30%に達すると推定されます。一方女性では閉経後に尿酸値が上昇しますが、高尿酸血症の頻度としては全年齢を通して5%未満です。
尿酸の産生が増加するタイプ、尿酸の排泄が低下するタイプ、およびこれらが混合するタイプに分類されます。尿酸排泄低下型が全体の60%を占め最多です。

尿酸産生過剰型
腫瘍(血液腫瘍、増殖速度の速い固形癌)、腫瘍崩壊症候群、多血症、溶血性貧血、尋常性乾癬、横紋筋融解症、甲状腺機能低下症、免疫抑制薬など
尿酸排泄低下型
慢性腎臓病(CKD)、多発性嚢胞腎、脱水、利尿薬、抗結核薬、免疫抑制薬など
混合型
肥満、妊娠高血圧症候群、飲酒、外傷・熱傷など
無酸素運動によって一時的に高尿酸血症を引き起こし、痛風発作の誘因となることがあります
高尿酸血症の治療
高尿酸血症の改善においては、生活環境の改善が最も重要となり、まずは食事や運動についての生活指導を行います。食事療法としてエネルギー(カロリー)制限、プリン体を含む食物の過剰摂取を避ける、飲酒量を減らす、十分な水分摂取の励行があげられます。また適度な運動習慣を取り入れることも大切です。
痛風関節炎を繰り返す例、痛風結節を認める例では薬物治療の適応となります。一方、症状のない高尿酸血症の方については、合併症を有する場合や血清尿酸値が8.0mg/dL以上の場合に薬物治療を検討します。
高尿酸血症の治療薬
尿酸生成抑制薬
食事や内因性(細胞破壊や新規合成)で生じたプリン体は、主に肝臓でキサンチン酸化還元酵素(XOR)によってヒポキサンチンからキサンチンまで分解された後、最終的に尿酸に変換されて血液中に放出されます。このXORの働きを阻害することで、尿酸の生成を抑える薬剤です。
- プリン型XOR阻害薬
- アロプリノール(先発薬品名ザイロリック)
- 非プリン型XOR阻害薬
- フェブキソスタット(先発薬品名フェブリク)
- トピロキソスタット(先発薬品名トピロリック)
尿酸排泄促進薬
高尿酸血症患者のほとんどが尿酸排泄低下型と考えられており、この病型に対して用いられる治療薬です。腎臓の近位尿細管に発現する尿酸トランスポーターの作用阻害が主な作用機序です。
- 非選択的尿酸再吸収阻害薬
- ベンズブロマロン(先発薬品名ユリノーム)
- プロベネシド(先発薬品名ベネシッド)
- 選択的尿酸再吸収阻害薬
- ドチヌラド(先発薬品名ユリス)
痛風
痛風発作とは関節内に析出した尿酸塩結晶を好中球が貪食し、炎症性物質が放出されて起こる関節炎です。
第一中足趾(MTP)関節、足関節などによく起こります。
血清尿酸値の変動が発作を誘発するとされており、尿酸値の上昇だけでなく薬物治療による尿酸値の低下によっても発作が誘発されることがあります。
30歳以降の男性では1%以上の方が痛風であるとされています。

痛風発作
MTP関節・足関節などに急激に激痛・腫れ・発赤が起こります。1回の発作自体は7~10日ほどで軽快します。発作が起こっていない間は無症状です。
痛風発作中の血清尿酸値は高いとは限りません。
痛風結節
血清尿酸値が長期間にわたり高値である場合、耳介・MTP関節・肘関節などの皮下や骨に尿酸塩結晶と肉芽組織で構成される痛風結節が形成されます。
痛風の治療
発作のない間欠期には、高尿酸血症の治療を行います。発作前兆期にはコルヒチンを服用し、発作極期にはNSAIDsパルス療法(短期間に限定して大量投与)、NSAIDsが無効・腎障害あり・ワルファリン内服中である場合にはステロイド投与が行われることがあります。
痛風発作は尿酸値の変動によって増悪するため、すでに尿酸降下薬が投与されている場合を除き、尿酸降下薬は使用しません。